何のへんじもありません

 子供たちは、あちこちさがしまはりました。池の中はもとより、林の中を見まはつたり、やぶの中をかき分けたり、川の中をつゝいたりしましたが、どこにもゐません。「亀さんよう、亀さんようい。」 いくら呼んでも、何のへんじもありません。 さあ、いよ/\心配です。「どうしよう。」「どうしよう。」 どうしようたつて、どうにもしかたがありません。くやしいやら、悲しいやら、泣出したいやうな気持です。 今になつてみると、あの大亀が、一ばん大事な物だつたやうです。あれがゐないとなると、もう、何も、かも、いやになつてしまひました。「もう少し待つてみなさい。かへつて来るかも知れないよ。」 ごいんきよは、さういひましたが、心細さうなやうすです。 子供たちは、なほ心細くなりました。

[#4字下げ]十[#「十」は中見出し] 八幡様の池の大亀がゐなくなつて、子供たちは、しをれかへり、しらがのごいんきよも気をもんでゐますと、ふいに、村はづれにゐる太十《たじふ》が、大きなざるをかついで、ごいんきよを尋ねて来ました。 太十は、びんばふな一人者で、その上、なまけ者です。 その太十が、今、ごいんきよの前に頭を下げて、何か恐しさうにふるへながら、一さいのことを話しました。     ○ 太十は、ふと、悪い心を起したのです。

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