亀がたくさんゐます

 八幡様の池には、亀がたくさんゐます。その中でも、珍しい大亀がゐます。亀の子どころか、よそで見られないやうな大きな亀です。「あれなら、きつと売れる。」と、太十は、つぶやきました。 その大亀をねらつたところが、思ひのほかたやすく、つかまへることが出来ました。 それでも、つかまへて見ると、あまり大きい亀で、太十も少し、きみが悪いので、二三日、なはでしばつて、家におきました。 それから、たうとうけつしんをして、ざるに入れて、町に売りに出かけました。 ところが、とちゆう、ふかい川のふちを通りかゝると、川の中から声がしました。「八幡池の大亀さん、どこへ行くかね。」 その声に、ざるの中から答へました。「町まで、さんぽに行くのだよ。」 太十は、びつくりしました。 それでも、なほやつて行きますと、今度は、大きなぬまのほとりを通りかゝつた時、ぬまの中から声がしました。「八幡池の大亀さん、どこへ行くかね。」 それに答へて、ざるの中からいひました。「悪者に連れられて、町まで行くのだよ。」 太十は、ぞつとしました。 ざるをそこに下して、考へてみました。「これは、とてもいけない、とんでもないことをしたやうだ。」と思ふと、ます/\恐しくなりました。 太十は、ざるをかついで、もう、町へは行かずに、すご/\引返しました。 ぬまの所へ来ると、また、声がしました。

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