ふしぎな岩

 ざるから大亀を出してやりました。そして、それをかついで、政雄や、一郎や、太郎や、英吉や、花子や、そのほかみんなで、八幡様の池に来ました。 大亀は、池にはなされると、ちよつと水にもぐつて、また、水面に浮いて、それから、ゆつくり泳いで、いかだの所まで行き、いかだの上にのぼつて、きよとんとしてゐます。「八幡池の大亀、ばんざあい。」 みんなで、思はず声を合はせて、さう叫びました。 太十も、この時、一しよに、ばんざいを叫んで、それから、「ひまのあるかぎり、子供たちの手つだひをして、野原を畠にする仕事に加りたい。」といひ出しました。 ごいんきよも、それに、さんせいしました。太十は、子供たちの仲間に加りました。 子供たちのこの仕事は、だん/\はつてんして行くでせう。 学校で勉強をしながら、また、いろ/\なことをしでかして行くのも、楽しいではありませんか。

 夜になって、ふしぎな岩は、そっと動きはじめました。岩が動くってへんですね。 あわいお星さまをすかして、霧のような山風が、ひくい谷間から、ごう、ごう、ごうと吹きあげています。どこかの森の方で、フクロウが鳴いています。岩は、どっこいしょと起きあがって、せいいっぱいにのび[#「のび」に傍点]をしました。「ああ、いい気候になったな……遠いところへ旅行をしてみたいな。」と、ふしぎな岩は、むくり、むくりと少しばかり歩きました。すると、谷間の方から、ざわざわとササヤブをふみ鳴らして岩山の方へ何かが登って来るようなようすです。ふしぎな岩は、「おや、何だろう?」と、じいっと耳をすましてまわりをながめました。 がさがさと音をたてて、やがて、一ぴきのオオカミのようなけだものが、いかにもつかれきったようなすがたでひょいと岩の前に登って来ました。岩はじいっと息をのんで、そのけだものを見ていました。 じいっと見ていると、それは、いつもこの山みちを通る、山小屋の飼犬のタローでした。こんな真夜中をどうして、いまごろ、タローがひとりで歩いているのだろうと、岩はみょうなことだと思っておりました。タローはつかれてへとへとになっていたのか、岩のところへ来ると、そこへ腹ばいになって、ウオー、ウオーと谷底をながめながらほえたてています。

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